円安の進行、企業の63.9%が「利益にマイナス」 ~ 適正な為替レート、「110円~120円台」が半数~ ..


米国によるドル安政策の歴史に本当に終止符が打たれたとすれば、円相場が適正水準である1ドル=188円を超えて円安となる可能性も皆無とはいえない。特に、極東の安全保障情勢は、ロシアによるクリミア侵攻以降の世界の分断と多極化によって、1980年代以前の米ソ冷戦時代に逆戻りしつつある。ロシアのプーチン大統領による6月の訪朝によって、ロシアと北朝鮮の関係も、61年に旧ソ連と北朝鮮が締結した事実上の「軍事同盟」に回帰した。今後、日本を取り巻く軍事情勢が著しく不安定化した場合、円相場が均衡水準を超えて、1ドル=200円以上の円安となる可能性を完全に否定することはできまい。筆者は、最近の円安の一因が日本を巡る地政学的リスクの高まりにあるとみている。


第57回「日米金利差とドル円レート」 知るほどなるほどマーケット

しかし、ドル円レートは2023年の年平均がほぼ140円、2024年は5月13日までの平均がほぼ150円と、円安による輸入物価の上昇圧力は高まっています。5月8日に植田総裁は「急速かつ一方的な円安、日本経済にマイナスであり望ましくない」と発言し、それまで為替レートへの直接的な評価を避けていた姿勢を変化させました。

第二次世界大戦へ至る世界情勢を振り返れば、経済のブロック化の下、関税引き上げ競争が通貨切り下げ競争に変貌を遂げたのち、軍事衝突が勃発している。前述の通り、ニクソン・ショックでは、米国は10%の輸入課徴金をカードにドルの切り下げを迫った。このように、関税引き上げと通貨切り下げは、世界の経済史において常に切り離せない。2024年11月の米大統領選挙でトランプ氏が勝利すれば、米中経済戦争が通貨戦争(Competitive Devaluation)に発展する公算大である。

差からみたドル円の適正レートと実勢レートの差は約 20% ..

《本資料は執筆者の見解を記したものであり、当社としての見通しとは必ずしも一致しません。本資料のデータは各種の情報源から入手したものですが、正確性、完全性を全面的に保証するものではありません。また、作成時点で入手可能なデータに基づき経済・金融情報を提供するものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。投資に関する最終決定はお客さまご自身の判断でなさるようにお願い申し上げます。》

中国は、すでに24年3月の全国人民代表大会(全人代)で、経済政策目標を内需から輸出に転換し、それ以降、輸出振興のために緩やかな人民元安誘導を実施していると言われている。自国産業保護を繰り返し唱えるトランプ氏が返り咲けば、1995年にクリントン大統領(当時)が採用したドル高政策を転換し、ニクソン・ショック以降ほぼ一貫して行ってきた伝統的なドル安政策に回帰して対抗する可能性が高い。このことは、米国によるドル安政策の歴史はいまだ終わっていなかったことを意味する。トランプ氏は、政権1期において自らを「関税の男(Tariff Man)」と呼んだが、政権2期においては、「通貨切り下げの男(Devaluation Man)」に改名することになるかもしれない。この場合、円相場は1ドル=115円まで上昇する公算が高い(をご参照)。

自社にとって適正なドル円為替レートの水準をたずねたところ、全体では4割超が ..

1995年に米クリントン政権は、為替政策のドル高転換を図る。しかし、その後も為替市場は、米国の通商圧力による円高の亡霊に怯え続けた。2010年代に入り、わが国の貿易・サービス収支が継続的な赤字を示すようになり、また、日銀が量的・質的緩和を導入したことで、為替市場はようやく「円高シンドローム」から解放され、行き過ぎた円高の是正に動き始めたのである。その結果、市場相場が今年7月に1ドル=162円近くまで円安になった。とはいえ、今なお均衡相場は1ドル=188円にあり、円相場は依然として15%も過大評価された水準にある。これが、日銀が非伝統的な金融緩和を継続しているのにもかかわらず、わが国のインフレが他の先進国に比べて抑制されている主因である。

現時点の為替レートは歴史的な円安だと言われる。通常、それは150円という市場為替レートの水準を過去の水準と比較することによって言われる。しかし、1980年代の市場レートは、150円よりずっと円安だった。いまがなぜ「歴史的な円安」なのかを理解するには、購買力平価と比較することが必要だ。

値を測ろうとするビッグマック指数も一種の絶対的購買力平価だが、一商品の価格だけで為替相場の適正値を計算す

第一は、「実質実効為替レート指数」だ。この指標は、BIS (国際決済銀行)が計算している。2020年 を基準年にし、それ以外の時点の購買力が基準時点と比べてどの程度の水準にあるかを示す。このため、「相対的購買力平価」と呼ばれる。

来週の円相場は下落しそうだ。米国の金利上昇とドル高の流れが続きやすい。一方、日本銀行の植田和男総裁が18日の講演で12月の金融政策決定会合での利上げに向けて踏み込んだ発言をした場合、円が買い戻される可能性がある。


中小企業、5割超が円安で悪影響 適正為替「135円未満」(共同通信)

為替レートは金利差、貿易・経常収支、潜在的な経済力などの多様な要因によって変動するが、長期的な為替レートの水準を考える際には「購買力平価(PPP: Purchasing Power Parity)」を参照することが一般的だ。PPPとは「為替レートは異なる通貨の購買力が等しくなるように決定される」との考えであり、「一物一価」が成り立つことを前提とする1。ドル円を巡っては、足下の市場実勢レートが1ドル147円前後で推移する一方、OECDが算出するPPPは2022年時点で97.6円となるなど、実勢レートがPPPよりも3割強円安方向で推移している。

公表の絶対的購買力平価は 1 ドル=174.24 円、実勢為替レートの年間平均は 1 ドル= ..

米スタンフォード大学のマッキノン・大野両氏は、1971年以降の円高を米国の通商圧力とそれに迎合した日銀の引き締め気味の金融政策が醸成した市場の円高期待によって引き起こされた「円高シンドローム」と呼んだが、日米の生産性に基づく円相場分析は、それと極めて整合的である。すなわち、71年のニクソン・ショックと85年のプラザ合意は、確かに、戦後の円の過小評価を是正する政策として正当化できるが、87年のルーブル合意以降、現在に至る円高は、「円高シンドローム」が生んだ円高オーバーシュート以外の何物でもない。このように大幅かつ長期的な円の過大評価が継続すれば、わが国が「暗黒の30年」と呼ばれる長期デフレに陥るのは当然である。

円レートは95年4月に1ドル=約80円となった後は円高是正が進み,特に96年末からの ..

本稿では、①日本円の市場実勢レートがPPPよりも円安水準を維持するシナリオ、②日本円の市場実勢レートがPPPに収斂する形で円高に転換するシナリオ、以上2つを検証する。

金価格とドル円の関係を算出式で表すと、以下のようなイメージになります。 日本 ..

図表1は2005~2022年平均の「PPP対比の対ドル実勢レート」と「GDP比の経常収支」を示したものである。対ドルで見た場合、①主要先進国通貨の実勢レートはPPPよりも通貨高、②先進国の中でも経常黒字国は実勢レートとPPPの乖離幅が大きい傾向、③新興国通貨の実勢レートはPPPよりも大幅に通貨安、以上3点が確認できる。また、2023年上期時点の日本円は韓国ウォンやメキシコペソの中間付近に位置している。

(2)購買力平価から見ると、ドル円為替レートの適正水準は当面1ドル110-120円

仮に日本の経済構造や製造業の生産性が、先進国よりも新興国グループに近づいている場合、PPPよりも円安な市場実勢レートが維持される可能性が高い。実際、経済力の低下と通貨安に苦しんだ先進国の例として、1970年代半ばのイギリス経済を挙げることができる。国際競争力の低下やスタグフレーション、財政収支の悪化等(所謂「英国病」)を背景に、同時期の対ドル英ポンド相場はPPP対比で3割方通貨安の水準で推移していた。現在の日本においては、例えばスイスのビジネススクールIMDが公表している2023年の国際競争力ランキングを見ると、日本は35位と韓国(同、28位)や中国(21位)を下回るなど、日本経済の競争力低下が垣間見られる。

為替レートはどう決まる?金利平価説と購買力平価説 | みずほ証券

今年3月に日銀はマイナス金利を解除し、量的・質的金融緩和政策を終了しましたが、金融市場に過度の影響を与えないよう、国債買入れオペはそれまでと同様の規模で継続する方針を決定していました。しかし、その買入れ方針にはやや幅が設けられていたため、その範囲内で国債購入額を減らしたのです。これを受けて5月13日に、10年国債利回りは4月末よりも0.07%高い0.94%へ、2年国債利回りも同じく0.04%高い0.33%へ上昇しました。

適正となるように決定した『適用為替レート』を提示いたします。 【日本円売り外貨買いの場合】適用為替レート ..

しかし、こうした「日本経済の凋落論」を基にした円安持続シナリオには幾つかの反論が挙げられる。日本の国際競争力の低下が嘆かれて久しい一方、①日本経済は世界第3位の経済規模を依然誇っており、②政府債務は膨大であるものの、通貨の信任性が懸念されるほどの高インフレは見られず、③経常黒字国かつ世界最大の対外純資産保有国を維持している、などが指摘できる。また前述したように、新興国通貨が割安な要因としては製造業の生産性格差が指摘される一方、現時点において日米製造業における生産性格差が拡大している兆候は見られない。例えば日本生産性本部(2022)による製造業における労働生産性の国際比較によると、日本の順位は2015年以降世界で16~19位と概ね横ばい圏で推移している(同期間の米国は4位を維持)。

【2024年前半】豪ドル円(AUD/JPY)の今後の見通し・予想

日本円が主要先進国通貨としての位置づけを保つ場合、ドル円は中長期的にはPPP水準へと回帰する可能性が高い。実際、主要先進国通貨である日本円、英ポンド、スイスフラン、豪ドル、カナダドルの5つに関して、市場実勢レートがPPPよりも大幅に通貨安な水準で定着したことは未だ存在しない。大半の主要先進国通貨が変動相場制に移行した1973年以降において、対ドル実勢レートがPPPよりも2割以上下落したのは、①1973~77年の英ポンド(前述した英国病の期間)、②1983~85年の英ポンド、③1985年のスイスフラン、④1985~86年の豪ドル、⑤1998年のカナダドル、⑥2000~02年の豪ドル、⑦2001~02年のカナダドル、そして⑧2022年以降の日本円、以上の8例である(図表2)。①の英国病の例を除けば、PPPと実勢レートの乖離は長くても2~3年しか持続せず、実勢レートがPPPに回帰する、すなわち実勢レートの増価によって両者の乖離が修正されてきた。

ドル円の適正水準はどこ? | トウシル 楽天証券の投資情報メディア

日本円の市場実勢レートは2022~23年にかけてPPPよりも2割以上の円安水準で着地する見通しとなる一方、こうした先進国通貨のPPPとの乖離が概ね2~3年しか持続しないことを踏まえると、日本円の実勢レートは2024~2025年にかけて円高へと転換する可能性が高い。2023年上期の日米CPI上昇率格差を基にすると、足下のPPPベースのドル円レートは96.2円と試算される一方、同期間の市場実勢レートは134.9円と28.7%円安な水準となっている。仮にPPPからの乖離が20%の円安水準まで縮小する場合、ドル円実勢レートは1ドル120円まで円高が進むと試算される。こうしたシナリオが実現する場合のドライバーは、FRBの利上げ停止や利下げ開始(或いは日銀の金融政策正常化)による日米金利差の縮小に加えて、エネルギー価格の下落やインバウンド消費拡大による貿易・サービス収支の改善などが考えられる。

ビッグマック指数/購買力平価理論 | 情報・知識&オピニオン imidas

しかし、ドル円レートが急変動したゴールデンウイーク期間後に、植田日銀総裁の発言に変化が出てきました。5月8日に植田総裁は「過去と比べると為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面があることは意識しておく必要がある」と発言し、円安で物価が上振れれば金融緩和縮小の可能性を示唆しました。その後、5月13日には冒頭に記載したように、日銀は国債買入れオペを減額しました。

カナダドル/円(CAD/JPY)の今後の見通しは?注目点を解説

1 本稿では、為替相場の「水準」に関する「絶対的購買力平価」に焦点を当てる。一方PPPには「相対的購買力平価」という仮説もあり、これを前提にすると二国間のインフレ率格差は為替相場の変化率と一致する。Rogoff(1996)は名目為替レートとPPPの乖離(=実質為替レートの均衡からの乖離)は3~5年の期間で半減すると指摘している。

昨今の円安進行について、63.9%の企業が「利益にマイナス」と回答。適正な為替レート ..

本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命保険ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。