第2次トランプ貿易戦争、4つの観点からドル/円を考える=高島修氏


トランプ氏が政権を奪還した場合のドルの問題は、為替レートだけではない。選挙キャンペーンで発表された20の公約の13番目は「ドルを世界の基軸通貨として維持する」というものだ。1945年以後、ドルは世界共通通貨に最も近い存在であり、敵味方双方にとっての基軸通貨だ。


トランプ前大統領 “円安ドル高は大惨事 国内の製造業 打撃” | NHK

トランプ氏は3月、「私は各国がドルから離脱するのを嫌う」とCNBCに語った。「各国がドルから離脱することを許さない」というのがトランプ氏の立ち位置だ。

2016年11月の米大統領選挙でトランプ氏が勝利すると、米ドル/円はほんの1ヶ月で101円から118円まで急騰し、「トランプ・ラリー」と呼ばれた。ただ、ここで記録した米ドル/円の高値118円を、その後2017~2020年のトランプ政権で更新することはなかった(図表1参照)。

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サンカラン氏は「トランプ氏がドル安を望むと同時に中国や日本、韓国などがドルの強さに不満を持つような世界であれば、トランプ氏の関税案がアピールできる可能性がある」と分析。

結果的に「トランプ・ラリー」は、トランプ政権1期目における最初で最後の米ドル高・円安となった。今回は、トランプ氏勝利後に米ドル/円は156円台まで上昇した。仮に、この156円で今回のトランプ氏勝利後の米ドル高・円安が終わりだったとして、後から振り返った時に、これがトランプ政権2期目における最初で最後の米ドル高・円安となるだろうか。

ドル安を誘導する米大統領になりたいドナルド・トランプ氏だが、強いドルに基づく政策を有権者に売り込んでいる。

トランプ政権1期目では、なぜ「トランプ・ラリー」が「最後の米ドル高・円安」となったのか。主な理由は2つだと考えている。1つ目は、「トランプ・ラリー」の中で米ドル/円とともに急騰した米金利が、2017年1月から正式にトランプ政権がスタートすると間もなく低下に向かったことだ。

トランプ氏の側近や市場アナリストは、もう一つ選択肢を見ている。関税賦課はそれ自体、ドル高をもたらすかもしれないが、中国などの貿易相手国に自国通貨高を促す強い力として働く可能性もある。

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トランプ氏の選挙公約は、当時も金利上昇をもたらしやすいと見られた。そのようななかでも目玉の公約である大型減税は次年度予算で審議された。つまり、審議が2017年10月からだったので、その前に「トランプ・ラリー」で米金利が「上がり過ぎ」となった分の調整が入ったと考えられる。そして米金利が低下する中で、米ドル/円も一旦下落に向かった。

米金利は、2017年12月に米議会で「トランプ減税」が成立すると上昇が再燃し、「トランプ・ラリー」で記録した高値の更新に向かった。しかし、金利上昇を嫌気するように株価は急落となったことから、この金利上昇は「悪い金利上昇」と呼ばれた。その状況で米ドル/円は株価急落に追随するところとなった。これが米ドル/円が「トランプ・ラリー」の高値を超えられなかった2つ目の理由と考えられる。


トランプ氏勝利で株急伸 一時1400ドル高、円は急落―米大統領選

今回、トランプ氏勝利後の米ドル高・円安が、トランプ政権1期目と同じように、結果として「最初で最後の米ドル高・円安」となるかは、やはり米金利や米国株の動向が鍵になるだろう。

共和党トランプ政権誕生でどうなる?ドル高円安の先を予測 | 高島修

米ドル/円独自の要因からすると、今回は「トランプ・ラリー」以上に「最後の米ドル高・円安」になる可能性が高いのかもしれない。米ドル/円の5年MAかい離率は、「トランプ・ラリー」のピークでも13%程度だったのに対し、今回は20%にも達していた(図表2参照)。

トランプ氏優勢の観測で円安・株高進む 一時1ドル154円台前半に

ヘッジファンドを運用しトランプ氏の資金調達に貢献したスコット・ベセント氏は、バイデン政権の「フレンドショアリング」政策を拡大し、米国のパートナー国間で段階的なシステムを構築し、ドル安目標の推進に貢献した国には貿易上の優遇措置を与えるとの話をしている。

ドル円の週間見通し 為替介入の思惑とトランプ氏銃撃の影響 ..

20%を「上がり過ぎ」の目安とすると、「トランプ・ラリー」は、短期的には記録的な米ドル/円の急騰だったが、必ずしも「上がり過ぎ」ではなかったのに対し、今回はすでに「上がり過ぎ」になる懸念が強い。この観点からすると、今回の方がより「最初で最後の米ドル高・円安」になる可能性がありそうだ。

【ポイント】 ・「トランプ勝利」なら長期金利上昇・米ドル高・株高? ・それとも「トランプ・ラリー」の先まで見据えて、市場は冷静に対応か

トランプ次期米大統領の政策と米金融当局の利下げで2025年後半にドルに下押し圧力がかかる可能性が高いとみて、ウォール街ではドルの見通しが弱まり始めている。

NY為替:米大統領選でトランプ氏勝利、金利高・ドル高・株高 | 通貨

トランプ氏と定期的に話をする経済アドバイザーらは、ドルに焦点を絞った通商政策の構想を練っている。その中にはトランプ氏が当選した場合の財務長官候補として名前が挙がっている2人も含まれる。

ドル円相場11/25週振り返り トランプ次期政権の関税政策受け円高へ

やJPモルガン・チェースなどセルサイドのストラテジスト約6人は、世界の準備通貨ドルが早ければ来年半ばにピークに達し、その後下落に転じると予測。ソシエテ・ジェネラルは、ICEドル指数が来年末までに6%下落するとみる。

ドル円見通し 第一次トランプ政権における円高の教訓(24/12/25)

ドルは今年既に大幅上昇しており、15年以来最大の上げとなるペース。米大統領選挙でのトランプ氏勝利と、好調な経済データを受け、トレーダーらが来年の米利下げ回数予測を下方修正したことが要因だ。

2025 年に始動する第二次トランプ政権(トランプ 2.0)では、減税政策に加え、関

とはいえ、ドル高を抑えたいと宣言しているためトランプ氏がどのような策を講じるのか、そして誰にその実行役を託すのか、誰もがその手がかりを探ろうとしている。

【為替】トランプ時代「最後の円安」の可能性 | 吉田恒の為替デイリー

ブルームバーグ・ドル・スポット指数は今年これまでに約6.3%上昇。大半は11月初めの選挙日直前からとそれ以降の上げだ。トランプ氏の関税と減税がインフレをあおり、米金融当局の利下げ方針を向こう数カ月にわたり複雑化させるとの見方がドル高を後押ししており、世界の投資家が米国に資金を移すインセンティブとなっている。

トランプ氏勝利で、円安・株高の「トランプ相場」 いつまで続くのか

トランプ氏は貿易に関してタカ派的発言を強めており、最近では、移民や麻薬関連の国境問題を理由にメキシコとカナダの物品に25%の関税を課すと表明。メキシコ・ペソとカナダ・ドルが下落した。トランプ氏は今月、新興国グループが基軸通貨としてのドルの地位に挑戦を試みているとして、同グループを批判した。

トランプ氏が「米国第一主義」を最大の公約に掲げて、大統領選挙に勝利し、米国の新しい

トランプ氏が提案した減税の結果、財政が緩めば、FRBは金利を上げ続けなければならなくなり、ドルが上昇する。関税も同様の効果をもたらし、外国製品の魅力を低下させ、貿易相手国の通貨需要を減少させるというのがその主な論拠だ。

日経平均一時1100円高、円安も進行 トランプ氏「優勢」思惑で

ただ、ドル強気派の多くはトランプ氏の貿易に関する見解が本質的にドルを支えるとの見方からロングポジションを積み上げてきただけに、トランプ政権2期目に貿易戦争の可能性が解消すれば強気派の失望を招くと、ダニエル・トボン氏率いるシティグループのストラテジストらは予想する。

【ワシントン共同】トランプ前米大統領は23日、一時約34年ぶ…

トランプ次期政権下のドル相場の動向を考える場合、過去の値動きが参考になる。8年前のトランプ氏初当選直後に急上昇した後、17年には、米経済の勢いが失われる一方で欧州の成長が加速したため、ブルームバーグ・ドル指数は年間で過去最大の下落を記録した。

佳境を迎える米大統領選ですが、市場ではトランプ前大統領の再選を織り込んでいるといわれます。その場合、市場はどのような動きになるのか。

モルガン・スタンレーやドイツ銀行などの金融機関は、トランプ氏の大統領選勝利はドルを押し上げる可能性が高いと結論付けている。

次期政権が関税引き上げを訴える背景(米国) | 地域・分析レポート

この結果を受けて金融市場ではトランプラリーと呼ばれるドル高米株高が進んでいる。トランプ氏が掲げる減税・規制緩和・高関税などの施策が現実化すると、米国内での物価上昇が見込まれ、利下げペースの鈍化などを招いてドル高になるという見方である。2016年の米大統領選でトランプ氏が勝利した際、1カ月ほどで17円超のドル高円安となるなどドル高が進んだこともトランプラリーを支えている。

政府・日銀による為替介入の観測とトランプ氏銃撃の影響、米小売売上高、FRB高官の発言そして欧州中央銀行(ECB)理事会..

ドル円はトランプ氏優勢が報じられた9月終盤からドル高円安が進んだが、選挙戦直前になってハリス氏の巻き返しが報じられたことでいったん調整売りが入った。結局トランプ氏が圧勝したことで再びドル高円安となっている。トランプ氏は前回以上に対外強硬姿勢を強めており、高関税の実施などの可能性が強まる中で、ドル高円安がもう一段続く可能性が高い。